社内SEをしていたとき、ユーザーからの問い合わせ対応をしつつ、システムへの機能追加や見つかった不具合の改修対応を行わなければならなかった。
あらためて振り返って、当時の環境についてどのようにしたらよかったのかを考えたい。今回は、予定外の対応となる問い合わせ対応(=インシデント対応)に注目していく。
当時の業務プロセス
当時の問い合わせ対応に関する業務プロセスを整理すると次のようになっていた。なお、これはヘルプデスク担当の業務ではなく、システム管理者である私自身が行っていた業務である。
サービスデスクも設置していたものの、個別システムに関する問い合わせについてはサービスデスクでは対応できなかったため、そのままエスカレーションされて対応していた。結果的に、ユーザーからはサービスデスクではなく直接私へ連絡が来ていた。
- ①問合せの受付
メール・チャット・電話・システムの問合せフォーム・インシデント管理システム等、何らかの手段でユーザーからの問合せを受付け。必要に応じて追加ヒアリングを実施。
- ②内容の調査・解決(回避)方法の検討
問い合わせ内容/ヒアリング内容をもとに状況を確認。状況に応じて、どうしたら事象が解決(回避)できるかを検討。テスト用の環境などで状況を再現できる場合にはそこで解決(回避)されることを実際に確認。
- ③解決(回避)方法のユーザー連絡
検討した解決(回避)方法をユーザーに連絡。簡単な方法なら電話で伝えるが、対応手順が長くなる場合には、Excelなどで簡単な対応手順書等を作成しメールで送付。
- ④解決(回避)されたことの確認
事象が解決(回避)されたかどうかを確認。解決(回避)できれば対応完了。解決(回避)できない場合は、②へ戻る。
改善後の業務プロセス案
改善後のプロセス案を整理した。
- ①問合せの受付(サービスデスク)
可能な限り問い合わせフォームまたはサービスデスクにて受付。問い合わせフォームには定型的な質問項目をあらかじめセット。電話・メールで問い合わせが来た時には、定型的な質問項目をヒアリング。
- 追加プロセス②受付内容のシステム登録(サービスデスク)
受付けた内容をインシデント管理システムに登録。問い合わせフォームからの受付の場合には自動登録。
- 追加プロセス③受付内容の分類(サービスデスク)
登録した内容について、過去や進行中のインシデント、現在対応中の問題、関連する構成要素(ハードウェア・システム情報)との紐づけを実施。この段階で、すでに過去の記録から解決(回避)方法が見つかればその内容を取得し、⑥へ進む。
- ④内容の調査・解決(回避)方法の検討(システム管理者)
過去の記録から解決(回避)方法が見つからなければ状況を確認。状況に応じて、どうしたら事象が解決(回避)できるかを検討。テスト用の環境などで状況を再現できる場合にはそこで解決(回避)されることを実際に確認。
調査内容・解決(回避)方法などはインシデント管理システムに登録。対応手順が長くなる場合には、Excelなどで対応手順書を作成しシステムに登録。また、すでに登録されていた構成要素(ハードウェア・システム情報)に誤りがある場合には記録を修正。
- ⑤解決(回避)方法のユーザー連絡(サービスデスク)
検討した解決(回避)方法をユーザーに連絡。
- ラベル⑥解決(回避)されたことの確認(サービスデスク)
事象が解決(回避)されたかどうかを確認。解決できれば対応完了。解決(回避)しない場合は、④へ戻る。
改善後プロセスのポイントは下記2点と思っている。
- 問い合わせ窓口をフォームまたはサービスデスクに集約し、ユーザー接点を統一すること。
- 簡単な問い合わせでシステム管理者の時間が奪われないようにすることを狙う。
- 最初はシステム管理者へ直接連絡が来ることも多いと思うが、サービスデスクがユーザー接点の単一窓口となることで、次第にシステム管理者への直接の問合せは減ってくることが期待される。
- インシデント管理システムに記録を蓄積していくこと
- 記録の蓄積によるナレッジ化を狙う。
- 最初はサービスデスクからシステム管理者へのエスカレーションは多いと思うが、記録が蓄積されてくるにつれて、サービスデスクで一次回答できる割合が増えてくることが期待される。
- そのためには、システム管理者も面倒くさがらずに、しっかりとインシデント管理システムに記録をつけて行く必要がある。
上記のようなプロセスとは別に、インシデントの根本原因となっている問題の解決のためのプロセスや、プロセス自体を改善するためのレビュープロセスのようなものも整備していく必要があると思う。
まとめ
ただ問い合わせを対応するだけではなく、「どうしたらもっとよりよくなるか」という観点でプロセスを組み立てることが重要。どんな業務においても、組織としての継続的改善のためのプロセスを模索していきたい。
おすすめの本
ITIL 4 の勉強を始めてFoundation試験に合格しました。本記事を書く上でも非常に参考になった書類です。
コメント