こんにちは。
今回は「所得税ってどうやって計算する?」の3回目です。
前回のおさらい
前回の記事では、年収と所得の違いや、所得の種類、給与所得の算出式について整理しました。
所得税 = 課税所得金額 × 税率
= (所得金額 − 控除額) × 税率
= (給与所得金額 − 控除額) × 税率
= {(年収金額 – 給与所得控除額) – その他の控除額} × 税率
上記式の中で、「給与所得控除額」「その他の控除額」「税率」の部分がまだ整理できていなかったので、今回の記事ではその点について整理していきます。
控除とは
控除とは、同じ年収の人でも、その人の状況に合わせて税金を少なくするものです。例えば、子供を養っている場合は支払う税金を少なくしてあげますよ、というようなものです。
国税庁によると、所得金額から差し引かれる金額(所得控除)は、15種類あります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1100.htm
- 雑損控除(災害や盗難などで資産に損害を受けたとき)
- 医療費控除(医療費を支払ったとき)
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄附金控除(ふるさと納税などの一定の寄付金を支払ったとき)
- 障害者控除
- ひとり親控除(寡夫控除)
- 寡夫控除
- 勤労学生控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 基礎控除
このように、災害の有無、配偶者の有無、寄付の有無など、一人ひとりの状況に合わせて控除額を決め、納税すべき金額を算出していくわけですね。
さて、ここで、もう一度冒頭で示した所得税の算出式を見てみましょう。
所得税 = 課税所得金額 × 税率
= (所得金額 − 控除額) × 税率
= (給与所得金額 − 控除額) × 税率
= {(年収金額 – 給与所得控除額) – その他の控除額} × 税率
この式と、所得控除の15種類のリストを見比べるとあることに気が付きます。そう「給与所得控除」については、15種類の中に含まれていません。
では「給与所得控除」ってなに?という点について、次で整理していきます。また、上記15種類の中から、基本的にどんな人にも当てはまる控除である「基礎控除」についても整理していきます。
給与所得控除
自営業の方であれば、経費はかかった分だけ計上すればよいのですが、実はサラリーマンにも経費が認められています。それが「給与所得控除」です。
「給与所得控除」の名称に「控除」とついているため大変ややこしいのですが、実際には、サラリーマン(給与所得者)専用の「経費」という位置づけでイメージするとわかりやすいです。
例えば「サラリーマンだって、スーツ代とか革靴代など、仕事に必要な経費があるよね」という感じです。
この給与所得控除の金額は、国税庁によって次のように定められています。
年収 | 給与所得控除額 |
---|---|
~162.5万円 | 55万円 |
162.5万円~180万円 | 年収×40%-10万円 |
180万円~360万円 | 年収×30%+8万円 |
360万円~660万円 | 年収×20%+44万円 |
660万円~850万円 | 年収×10%+110万円 |
850万円~ | 195万円(上限) |
例えば、年収360万円の方の給与所得控除額は116万円となります。
給与所得控除額 = 360万円 × 30% + 8万円 = 116万円
サラリーマンは経費が使えないので、個人事業主と比較して不利だなーと思っていましたが、むしろ、無条件で116万円も経費扱いとなる、というのはなかなか凄いことだと驚きます。
また「360万円 × 20% + 44万」と計算しても116万円になることから、基準値をちょっと超えたからと言って控除額が一気に変わるようなことがないように配慮されている点に感心しました。
基礎控除
基礎控除とは、ほぼすべての納税者を対象としている控除で、国税庁によって次のように定められています。
納税者本人の合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
他の所得控除については、色々な条件を満たす場合のみ控除を受けることができるのですが、この基礎控除については上記の通り、多くの人が無条件に当てはまる控除となります。
税率とは
税率は、税金を決めるための係数で、所得金額に応じて下記表のように決められています。年収ではなく「所得金額」が基準になります。
課税対象の所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
~195万円まで | 5% | 0円 |
195万円~330万円 | 10% | 9万7,500円 |
330万円~695万円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円~900万円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,800万円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~4,000万円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円~ | 45% | 479万6,000円 |
この表を見るとすごく勘違いしやすいのですが、例えば、課税される所得金額が400万円の場合、400万円全体に20%が課税されるのではないということです。この場合、195万円までは5%、195万円〜330万円までの135万円に対して10%、330万円〜400万円までの70万円の部分に20%が課せられます。
イメージしやすいように図にしてみました。
実際にはこの段階的な税率計算をすると大変なので、税率の差額をあらかじめ計算された「控除額」を使用して次のように計算します。
所得税 = 課税対象の所得額 × 税率 – 控除額
= 400万円 × 20% − 42万7,500円
= 37万2,500円
まとめ
所得税 = 課税所得金額 × 税率
= (所得金額 − 控除額) × 税率
= (給与所得金額 − 控除額) × 税率
= {(年収金額 – 給与所得控除額) – その他の控除額} × 税率
所得税の算出式のうち給与所得控除やその他の控除、税率について整理してきました。
- 控除
- 一人ひとりの状況に合わせて、納める税金を少なくするもの(所得金額から色々な控除を差し引いていくことで、課税対象となる所得金額を下げることができる)
- 給与所得控除
- 給与所得金額を計算するときに、年収に応じた金額を差し引くもの
- 「控除」と名前がついているが、実際にはサラリーマン専用の「経費」という位置づけでイメージするとわかりやすい
- その他の控除
- 所得から控除できる控除として15種類ある(医療費控除、配偶者控除、基礎控除など)
- 基礎控除
- ほぼすべての納税者に当てはまる、基本的な控除
- 所得が2,400万円以下の人は48万円控除される
- 税率
- 所得税を決めるための係数
- 税率は所得金額によって決まる
ここまでの説明で、所得税を求めるための基本的な要素については整理できたかと思います。次回は、いくつかの年収パターンについて、実際に所得税を計算してみたいと思います。
なにか誤った説明があればぜひご指摘ください。また、不明点があれば、お気軽にコメントしてくださいね。調べつつ、分かる範囲で補足していこうと思いますのでよろしくおねがいします。
それでは、今日はここまで!
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